そいつはNG客にしてもらった。


けどそれは、後日の事で…

その時のアタシに、そんな余裕はなかった。


身体の痛みで、状況が甦える。



やり切れない悲しみに取り憑かれて…

どーしようもない屈辱感に襲われて…


胸が張り裂けそうだった。





乱暴な客は初めてじゃない。

そして、そんなに珍しくもない。


だけど…

こんなに酷いヤツは初めてだったし…

何よりも…



今日という事が、アタシを苦しめた。




「おい!
いつまでタバコ吸ってんだ!
指名だろ!?」



…え?



ヤバ…

ハナシ聞いてなかった。


アタシはタバコの火を消すと、
とりあえず客を迎えに行った。




「なんだあいつ…?」

夕月の様子に、店長が呟いた。


「あの子、様子がヘンだったけど?


泣きそーな顔して…
…入店した頃みたいだった。


タバコも、火ィ着けたまま吸ってなかったしね…」


レイカは淡々と答えた。