とっさにオレは、走って車に戻ると…

さっき返してもらったスーツを取り出した。


「なにしてんだ、尚!」


追いついた智和の問いに答えず、
また走って事務所に戻った。



不自然に雨で濡れた、クリーニングのビニールを剥いで…

スーツをロッカーの扉にかけた。




そしてまた、そのコを見つめた。





手を…

差し伸べたかったけど…



今 近づいても、
逆に混乱するだけだと思った。



それに、3日後に県外に立つオレには、
なんもしてやれないって思った。




ただ…



どうか、この現実を乗り越えて欲しい




そう、強く…


強く願った。