「あはは・・・寝不足?」

そう言って、彼は無邪気に笑った。
無邪気な、柔らかい笑顔だった。
しかし、美沙にはその魅力的な笑顔よりも、彼の声のほうに驚いた。

(・・・!?)

信じられない。

美沙は、驚愕に目を見開いていた。
また硬直してしまう。

だって、彼の声が。

だって、彼の口から出た音は、紛れも無く。

だって、あの声と同じだったから。

忘れもしない――――押しが弱い、それでもあの優しい声。

聞き間違いだろうか?
美沙はもう一度冷静を装って考えてみる。
結論は―――否。
紛れも無く、絶対に、あの声だった。

(本当に)

〝声の主〟が存在したなんて。

(幻想じゃなかったんだ)

彼は、本当に居た。

(私は)

彼に会えたんだ。

(見つけられたんだ)

彼を。あの優しい声を。