美沙は願う。



(いや、やめて)



今すぐ、この光景を消し去りたい。



(止めて)



もう、見たくない。

かつての美沙の姿を持つ〝それ〟の高笑いが、しつこく闇の中に響き渡った。
まるで、美沙を嘲笑うかのように。



(助けて)



もう、嫌だ!




「も、もう止めて・・・っ!!」



叫んだつもりの声は切れ切れで、美沙本人にさえ、吐息に掠れるほどにしか聞こえなかった。

それでも、美沙はもう一度強く叫ぶ。



全てを、消し去るために。



過去の光景を、



辛い思い出を、



仕方なく、友を裏切った罪悪感を、



脳裏に浮かぶ、彼女の姿を、



そして、この悪夢を。



全て、全て。