「そっかー」

佳織は騙されている。
寝不足なんかではない、のに。
なんと言うことも無い誤魔化しなのに、いつもこんな風にしているのに、何故かそんな気持ちは消えなかった。
そんな事に、それだけの事なのに、囁きが聞こえた気がした。

友達を騙している

(もう、聞きたくない)

止めてよ。
止めてよ。
これ以上、掻き乱さないで。

今すぐ、耳を塞ぎたかった。
そんな事をしても、何も変わらないのに。

不思議と、涙が出てきそうだった。

「何か、美沙、今日変だよ?」

由香にまで言われてしまった。
とりあえず切り返さなくちゃ、と思う美沙はにわかに焦って言う。

「昨日全然寝てないから・・・」

寝不足なんかではなかった。
否、ある意味では正しかったかもしれない。
寝ることは寝たのだ。ぐっすりとは行かなかったけど。

(あの夢のせいだ)

そうだ。
あの夢のせいで、気持ちがおかしくなっているのだ。
普通では何とも思わない事にさえ、神経過敏になって涙が出て来そうになる。

なんでだろう?

なんでだろう?

今、私はこんなにも満たされている、はず、なのに。