「おはよ―――っ」

文字の割に騒がしくも無い、天然っぽい声があたりに響き渡った。

「あ、麻友。おはよ」

仙田麻友。当然のように中学1年生。美沙たちと同じクラスである、当然。
タレ目で少しぽっちゃりしているが、愛嬌のある顔立ちは優しげな印象を与えるとともに、明るさ、面白さも滲み出している。
ついでに、見た目そのままの性格である。
ポップスより演歌が好き、
30代以降・・・それより上でも普通に「カッコいい」と言える思考回路、
妙にキャピキャピした・・・というのだろうか、いつ聞いてもはしゃいでいるような話方と声、
―――いや、もう止めよう。
ここまで並べただけで彼女がかなりの変り種、だという事は分かってもらえるはず。
それでも、苛められるどころかむしろ大多数に好かれているのは、彼女が裏表の無い性格だから、だと美沙は思っている。

(もちろん)

裏表が無いからといって、それで逆に嫌われる人間も多いけれど。

美沙は少しだけ想い、とにかく麻友は運が良かったのだろう、と無理矢理に暗い考えを吹き飛ばす。

「ん?美沙、どうしたのー?」

(あっ)

まただ。
今日はぼうっとする機会がやけに多いらしい。

「あ、ああ、何でもないよ、寝不足かも」

とりあえず、そうかわしておいた。