1、2、3番目。

吉永君は、いない。

吉永君が、いない。

足を引きずったおばあちゃんが時間をかけてステップを上がる。

唯一、空いていた優先席に、横入りして当然のように座る若者。

困惑しているおばあちゃんを前に私はさっと席を立つ。

「良かったらどうぞ」

これみよがしに言ったつもりはなかったけど、優先席に座っている若者の舌打ちが響いた。

「いいのかい、ありがとうね」

目を細め、優しい顔でほほ笑むおばあちゃん。