「良い。どうせ、買い出しに行くところだ。」
そう言うと、鍵を出す。
「少し待て。車を出す。……平気か?」
「大丈夫です!酔わない方なので!」
「……心配したのはそっちではないのだがな。」
溜息混じりにシャルドネは車庫を開ける。
「車持ちなんて、おかねもちー!!」
「言うほど立派でもない。」
「でも、ぴかぴかで、新車みたい!」
「人並みに掃除はしてあるからな。」
「シャルドネさん、潔癖?」
「人並みだ。」
そんな会話をしながら車に乗る。
「助手席も後ろも空いている。好きに座れ。」
「じゃあ、助手席で!」
リコリスは車に乗る。
「おじゃましまーす。」
(危機感がない……)
シャルドネは困った表情をした。
「?」
「少しは男と居る自覚をした方がいい。」
そう言うシャルドネにリコリスは瞬きをする。
「っていうか、車があるなら車で来ればいいのに。」
「あそこから先は車が進入禁止規制されている町につながる。故に、周囲に駐車場がないから不便だ。」
「そうなのですかー。」
リコリスは納得した。
「案内をしろ。」
「私も、お買い物ご一緒していいですか?」
「用事があるのか?」
「そうです!」
にこにこするリコリスにシャルドネは“そうか”と頷くと、エンジンを入れる。
「用心深い運転するんですねー。」
「がさつだ。」
「これがガサツなら、慎重な人はどんな運転ですか。」
慎重に辺りを警戒する様子にリコリスは言う。
「シャルドネさんって、あれですよね。」
「?」
「なんていうか、謙虚?」
「疑問符を付けられても困る。」
シャルドネは呆れる。
「何か、ユーベルヴェーク閣下とは違って、厳しいけれどどこか可愛いですよね。」
「……お前は時々、理解に苦しむ。」
リコリスに眉を寄せてそっぽを向く。

店に入ると、買い物かごを片手に歩くシャルドネの横を並んで歩いた。
「これって、デートっぽくないですか?」
「全く。」
即座に否定されてリコリスは口を尖らせる。
「お前は部下だ。それ以上ではない。」
「ひどーい。冗談に乗ってくれてもいいのにー!」
「軽はずみなことを言うと、大事なことを伝えるときに伝わらなくなる。」
「カタブツ。」
「言ってろ。」
シャルドネは淡々と買い物を済ませる。
「お前が買うものは何だ?」
「あぁ!牛乳と、パン……後、ダージリンを切らしていたでしょう?」
「そうだったな。」
「後は、卵、かなー?」
リコリスは考えるように指折り数えて言う。