「おい。いい加減にしろ。これは私の問題だ。」
「いいえ!私の大事なひとがこんな理不尽な話を請け負うのを見てられません。」
「関係がない話だ。どんなことになろうと、私がこの部隊に居ることは変わらない。」
シャルドネは手紙を取り返すと男に手渡す。
「これ以上、貴方が傷つくのは嫌です!」
男から手紙を取り上げ、リコリスは言う。
「配達員の仕事を邪魔するな。」
「だって……」
リコリスはシャルドネを見据える。
「私だって、貴方の役に立ちたい。こんな護られ方、嫌です。」
「何も護っていない。」
はっきりと返した。
「お願いです。……こんな、自分だけ傷ついて解決しようとしないで。」
切に願う言葉にシャルドネは怪訝そうにする。
「今更、こんなことで傷つきはしない。」
そう言うと、手紙を取り返し、配達員の鞄に入れた。
そして、配達員は時間が迫ってるのか早足で去ってしまった。
「戻るぞ。」
取り返せない状況になってしまったのを見て、シャルドネは言う。

部屋に戻ると、リコリスはそっぽを向いている。
すると、書類をしていたシャルドネは立ち上がり、奥へ向かった。
少しして、クッキーと紅茶をリコリスの傍に置いた。
「こんなんで、機嫌が直ると思わな」
「チョコレートもあるぞ。」
「……いでくださいよ。いただきます。」
拗ねた口調で嬉しそうにチョコレートを口に入れた。
「おいしー!!」
幸せそうな表情にシャルドネはふっと笑う。
「全部食べていいが、書類は終わらせるように。」
「はーい!」
にへっと笑ってリコリスは返事をする。

夜が更けて、リコリスは自宅へ帰る。
「シャルドネさんは帰らないのですか?」
「あぁ、そろそろ帰る。」
「一緒に帰りましょ!」
「構わん。」
そう言うと共に部屋を出た。
鍵を閉めると、リコリスが後ろ髪を引っ張る。
「何をする。」
「ん?髪、サラサラだし、きれーだなーって。」
「世辞はいい。」
「ほんとです!」
リコリスは地団駄を踏む。

シャルドネの家に着くと、気付いたようにシャルドネはリコリスを見る。
「何で着いてくる。」
「え?」
リコリスも気付いたようにする。
「つい、話に夢中になって来ちゃいました!」
「馬鹿。」
シャルドネは呆れる。
「夜道は危険だ。お前さえ良ければ送る。」
「そんな、折角ここまで来たのに申し訳ないです!」