そう思いながら、部屋に入った。
部屋ではリコリスが書類をしながら待っていた。
「あ!おかえりなさい。」
「ここは家ではない。」
「うーん。お疲れ様です?」
「正解。」
「お疲れ様です!」
困った表情を一変させて、リコリスは笑う。
「あぁ。」
シャルドネは机に向かい、書類をする。
「ダージリンは一杯分はありましたよー!」
少しして、紅茶が置かれた。
「お前は良いのか?」
「はい。アプリコットを飲みました!」
「そうか。」
そう言うと、シャルドネは湯気が出ている紅茶を冷まさずに飲む。
「火傷しますよー!」
「平気だ。」
何食わぬ顔で書類に向かうシャルドネをリコリスが不思議そうな顔で見る。
「そう言えば、先程、ロッテンマイヤー様からお手紙が届きました。」
「……?」
シャルドネは目を細めて差し出された手紙を受け取る。
そして、丁寧に封を切ると中身を見た。
「——そうか。」
(どうせ、また何か企んでいるに違いない。)
そう思うシャルドネの目はどこか諦めているようでもあった。
「どんな内容で?」
「大事無い。」
そう答えて、手紙を畳む。
「大事無いのに、そんな顔をするのですか?」
「顔は生憎、生まれつきだ。」
顔を覗き込むリコリスにシャルドネは言う。
「もー!」
リコリスは地団駄を踏む。
「そんなこと言ってると拗ねて他の部署に行ってやるんですから!」
「なっ!」
シャルドネは少し狼狽して、手紙を取り落とした。
「……まぁ、行きませんけどね。」
そう言いながら、手紙は素早く拾い上げた。
「言わないなら、情報を得るまで!」
してやったりという顔でリコリスは手紙を見た。
「返せ。」
「もうおそいですー!」
「……はぁ。」
呆れたように溜息を吐く。
「気が済んだら声をかけろ。」
そう言うと、返事を書く為に筆を執った。
手紙は、ロッテンマイヤー家に養子にしたいという内容だ。
代わりにユーベルヴェーク家に多額の支援するとの話だ。
「養子になるのですか?」
「そうだ。」
シャルドネはあっさりと言う。
「ロッテンマイヤー家といえば、現在、跡継ぎが許嫁と婚約をしていたところ、跡継ぎが亡くなったとか。」
「あぁ。そうだったな。」
どこか他人事のようにリコリスに返答した。
「もしかして……」
「私を政略結婚の道具にしようとのことだな。」
「そんな!」
リコリスは膨れっ面で抗議する。