『処罰は四年の監獄、ロッテンマイヤー家からの追放だ。』
淡々と下す警官にクレアフィールは唇を噛む。
『監獄、というのは』
『無論、暴力的なものだ。』
あっさりと言ってのける警官にクレアフィールは殴りかかりそうな気を抑える。
『では、私が罰を下す。』
(それが、せめてもの償いだ。)
クレアフィールはそう言って踵を返す。

「罪は全て償った筈。今更、何を」
「ロッテンマイヤー家当主、スクエード……罪を着せた張本人が再び養子に欲しいと、言っているようですぞ。」
ロランは小馬鹿にしている。
「今度は何の罪を彼に着せようとしているんでしょうな。」
「無論、拒否だ。」
「生憎、それを決めるのは彼自身だ。彼はユーベルヴェークでもロッテンマイヤーでもない。唯の身分なき者なのだから。」
クレアフィールは眉を寄せる。
「表向きには彼奴は何と?」
「“跡継ぎが居ないと困る”ということらしい。」
“勝手な話だ。”とロランは言う。
「あの後、シャルドネの代わりに養子に入れた者が先日死去した。理由は病死とされている。」
「含みがある言い方だな。」
「随分、頭が回る者だった。故に」
「殺された、か。」
「物騒ですぞ。」
クレアフィールに嗜めるふりをして、ロランは視線で肯定する。
「彼とて、優秀だ。それは、かつて俺の部下として所属していた頃から解っている。だが、自分を護ることをしない。それが、付け込まれる要因だ。」
「あいつ以上に利用しやすい知的な馬鹿は居ない、と。」
「そうだな。」
ロランは笑う。
クレアフィールは眉間に皺を寄せた。

『お前は母の子ではない。』

いつしか、言われた言葉が過る。

シャルドネは廊下を歩き、他の書類を提出しに行った。
その過ぎった言葉は、何も知らない考えなしの人間が言った言葉だとして気に留めていない。

母は赤茶けた髪色で、父は紺色の髪色をしていた。
他には兄が二人と妹と姉が居たが、兄は二人共紺色で妹は栗色をしていた。
シャルドネだけが、燃えるような橙色をしている。

故に、そう言われたのだろう。

下らない話だ。

親によれば、橙色は曾祖父の遺伝らしい。

人間と鬼が争っていた時代の英雄と称される存在。
そして、ユーベルヴェーク家の繁栄を促した存在。

そんな曾祖父の話を思い出す。

「ユーベルヴェーク、か。」
ふっと笑って呟いた。
(今の私には関係がない。)