「あ!……まってくださーい!」
慌てて自分も外へ出る。

医者はリコリスの治療の後にシャルドネの怪我を見て眉を寄せた。
「君はまた……随分と酷い怪我を。」
「お手数かけます。」
淡々と答えると医者は困った顔になる。
「痛覚がないのも考えものだね。」
「不便はしていません。」
そう返すと、手当が終わったのを確認して服を羽織ると立ち上がる。
「だめだめ!入院しなさい。」
「そのような暇はありませんので。失礼。」
「こら!」
医者は外に出るシャルドネを追う。
つかつかと歩いて去ったのを追う医者に、待合室で待っていたリコリスが不思議そうな顔をする。
「シャルドネさん」
「何だ?」
「こら、君!」
足を止めたシャルドネに医者が追いつく。
「何度も言わせるんじゃない。絶対安静だ。これ以上怪我が悪化したらどうするんだ。」
「仕事がある。」
「ただでさえ、痛覚ないから悪化しても自覚しにくいというのに仕事も何もあるか。」
医者との会話に何となく事態を把握したリコリスはシャルドネを見る。
「はい!お医者さんの言うことは聞きなさーい。」
シャルドネの背を押すと、言った。
「仕事は任せてください。大丈夫ですよ。」
「……わかった。」
不満そうな顔をしながらも、シャルドネは渋々承諾した。
「こちらへ。」
看護婦に連れられ、病室へ向かう。
「あの。」
医者にリコリスは声をかける。
「何故、シャルドネさんは痛覚がないのですか?」
「……正確には、麻痺しているというのが正しいな。慣れてしまっている。」
「もしかして、あの怪我……」
(過去に酷い目にあったのかな。)
古傷を思い出して言う。
「だから、気を付けてやってくれ。あいつは人一倍鈍いからな。」
「わかってます!任せて。」
リコリスは微笑んだ。

数日後、退院したシャルドネは政務に向かう。
「もう、大丈夫なのですか?」
「あぁ。迷惑をかけた。」
「いいえ。」
リコリスは首を振る。
すると、突然、扉が開いた。
「シャルドネー!!」
クレアフィールが入ってくるなり、抱き付く。
「さびしかったぞー!見舞いに行けなくてすまない。代わりに愛情込めたハグをするからな!!!」
「やめてください。」
「やーん!つめたーい!!」
困った顔のシャルドネと抱き付くクレアフィールにリコリスは笑う。
「じゃ!私も混ざろうかな。」
クレアフィールもぎゅうと抱きついた。