それからの夏休みまでの授業は全部に集中した。

今までは先生の顔を見ることにばっか集中してポーってしてたから。
話をちゃんと聞いて、顔をちゃんと見て、ってね。

そう、今も英語の授業中。
先生はいつ見ても、ほんっとかっこよくて。
話し方も好き。優しい言い方で。雰囲気も優しくて。

机に肘をついてアゴを支えながら先生を眺めてた...

「沙奈美?話、聞いてた??」

あれ?何で私の隣にいつの間に?
ボケっとしながら隣にいる先生のことを上を向いて見てたら

「どんだけ俺のこと見てんの?口空いてるぞー。」

っっ!とっさに私は口を押さえた。
先生は笑ってるしっ!

笑いがおさまって、先生は

「夏休み前最後の授業で、夏休みの予定をみんなの前で発表するから、その下書きを今書く時間なんだよ。さっきから沙奈美はボケっとして話聞いてなかったろ?」

えっ、そなんだ。全然耳に入ってきてなかったぁ。
あーぁ。ちゃんと話し聞くって決めたのにーっ。

先生ばっか見てて、やっぱ耳に入ってこないよ。先生はみんなの先生。みんなに優しい先生なんだ。私に今することを説明したら、もう他の人のところに行っちゃった。そんなの当たり前ってわかってる。みんなの英語の先生だもん。わかってる。

私だけのものじゃないのもわかってる。先生と生徒の関係なんてありえないこと。叶わないこと。告白したって叶わないの。でも告白する勇気なんてのもない。

だから私は
先生のことを見ていることしかできないの。ただ見てるだけだから、それだけは許して...。