「残念ながら、まだそこまでたどり着いていないけれども、直実さんは何度か引っ越ししているみたいでね。そこまでは分かっているから直実さんを見つけるのも時間の問題だと思うよ」


「そうなんだ。」


私が少し残念そうに言うと、


「…ここまで調べるのに結構苦労したんだ。少しは労ってくれてもいいんじゃない?」


智史が少しオーバーに肩をすくめてみせる。


「ありがとう。…それで毎晩帰りが遅くなっていたの?」


「そういうことになるかな。本当はちゃんとはっきり居場所が分かってから伝えようと思っていたんだけれと、愛美がこうして訪ねて来てくれたから、嬉しくてつい教えちゃった」


よほど嬉しかったのか、智史はいつもよりおどけてみせる。


そんな智史を見て、私は少し笑ってしまう。もうすぐ本当の母親が見つかるという安堵感もあったのかも知れない。


智史は、直実の住んでいた住所を書いた紙を渡してくれた。いくつかの住所が書いてあったが、どれもそんなに遠くない住所だった。これなら、すぐ見つかるだろうと私も思う。


「お母さん早く見つかると良いな」


「うん。智史ありがとう」


「智史ってもっと呼んで…」


そうして、智史は再び唇を重ねてきた。