「…そんな、こと言われたって…っ、綺麗事…よ、今までみんな私のこと怖かったんでしょ!?…私がクラス内でお金持ちで権力があったからついて来てたのに…っ、私がここにいる意味なんてない…っ。」
震える声で途切れ途切れながらも訴えるように叫ぶ理緒がしゃがみ込んで、顔を両手で覆ったのを確認して一歩一歩近づく。
…まるで、少し前の私みたいだった。
ここにいる意味も居場所も見つけられなくて、ずっとずっとひとりで足掻いていた。
…でも、そんな時に私は背中を押してもらったんだ。
温かい光のような大切な人に、手を伸ばして引っ張り上げてもらった。
「理緒、このクラスは理緒がお金持ちじゃなくなったから、とかそんなことで見下さない。怖がっていたかもしれないけど、だからって理緒のこと憎んでないし。…意味とか理屈とか、そんなのいらない。…ここが理緒の居場所。…それだけだよ。」
…だったら、今度は私が誰かの背中を押せたら。
理緒の目の前についたところで、そっと少し屈んで右手を伸ばす。
気配を感じたのかゆっくりと顔を上げた理緒が、私と差し出した手を見比べてまた瞳を揺らした。
「…私は、これ以外に上手い過ごし方は分かんない。…性格も変えられると思ってない。それでも、…っ私を、クラスの1人として認められるのっ…?」
「…もちろん。」
涙をこぼしながら不安そうに聞いてきた理緒に笑顔で答えると、
ぎこちなく私の手に理緒の手が重なる。
それと同時に理緒を引っ張り上げて立たせた。
「…理緒、つまらないプライドは、自分を苦しめるだけだよ。素直な自分でいた方がずっとずっと世界が自由に見える。」
お互いに同じ目線になったところで、最後にそう私が言うと、何度も黙って頷いていた。
このクラスで孤立したように自分の思い通りにいかないものを排除させるような女王は、もういない。
……理緒は、絶対に変わってくれるから。