「理緒、さすがに今の言い方は…」








異論を唱えようと声を出した私を遮ったのは、前に聞いたことのある、パンッという乾いた音。









クラス全員がびっくりして固まる。









…だって、絶対に今まで逆らわなかったのに、理緒軍団の1人が理緒の頬を叩いたから。









しかも、目から大粒の涙を流して。








「…あたしたちはっ…、お金持ちとか権力があるからって理由で理緒と仲良くしてたんじゃないっ…!!そんなことずっと思ってたのっ、…!?…ふざけないでよっ…!!」







「……っ」







初めて叩かれたのか頬に手を当てたまま立ち尽くす理緒に泣き叫ぶようにそう言って、教室から出て行く。








「理緒…、私たちもそんなくだらない理由で理緒と一緒にいたわけじゃないから。」










それに続いて、残りの2人も教室からそう言い残して教室からいなくなった。









「…何なのっ…、私の頬を叩いて、絶対に許さないっ…!!」








「……理緒、痛かった?」







「痛いに決まってるじゃない!!あいつ力込めて叩いたのよ!?」










理緒に静かに問いかけると、当たり前、とでも言うようにこっちを見て叫ぶ。








…うん、痛いに決まってる。








でも、…きっと、それは理緒が今まで与えてきた痛みだよ。










「…理緒が叩かれたよりもずっと、ずっと、きっとあの子達は痛かったよ。」








「は、はあ!?何言ってんの?!叩かれたのは私なんだけど!」







「…違うよ、胸が、だよ。理緒にあんなこと言われてずっとそう思われて過ごされたんだって思うだけで苦しくて辛くて痛かったんだよ。理緒の裏切りの方がずっと痛い。」








意味わからない、って顔に書いてある理緒に構わずに言い続ける。