「編集長って、何でそんなに仕事人間なんですか?」

編集長行きつけの蕎麦屋で、向かい合い蕎麦をすすっていた編集長は、わたしにお得意の睨みをきかせた。

「仕事人間って何だよ。あれくらいフツーだろ?」

「全然普通じゃないですよ。怒鳴り散らし過ぎですって。デスクを『ドン!』もよくやるでしょ?」

熱い蕎麦に息を吹きかけながら、少しぞつそそる自分が我ながら笑えてくる。

麺類は豪華にそそるのに、編集長の前では可愛子ぶってるのだ。

だけど、当の編集長はそんな姿を気に留める様子もなく、ざるそばを豪快にすすっていた。

「別に、自分ではやり過ぎだと思ってないんだけどなぁ。いい物を仕上げたいって思ってるだけだよ」

「そうですか…」

そうだよね。

編集長は、きっとそういう人だもの。

だから、わたしも仕事を頑張ろうって思えるんだし…。