繁忙期にもなると、なかなか昼休憩にも行けれない。

それはみんな一緒で、そういう時は実は編集長がさりげなく調整しているのだ。

声をかけたり、仕事を頼むのも、「昼休憩が終わってから」の様に休憩を行きやすくしてみたり。

そんな気遣いさえも伝わらないんだから、編集長も気の毒だけど、わたしだけが気付いてる。

その感じが優越感だったりするのだ。

「平瀬、昼メシ今からだろ?」

ちょうど廊下を出たところで、編集長に声をかけられた。

「そうですよ。編集長もですか?」

「ああ、オレも今から。良かったら一緒に行くか?」

「うーん…。じゃあ、ぜひ」

「何だよ、気の無い返事だな」

少し不満げな編集長の半歩後ろを歩きながら、ときめく気持ちを抑えた。

わざと気乗りしない態度をしたけど、本当は違うから。

誘われたのが嬉しくて、半歩後ろじゃなくて、真横を歩きたいくらい。

「みんな、オレからの誘いを嫌がるんだよなぁ」

自虐的な編集長に、わたしはまたウソをついてしまった。

「当たり前じゃないですか。誰だってイヤですよ」