「は、はーい」

この声のトーンは、何かミスがあった時のトーンだ。

あくまで編集長はお怒りモードだけど、それすらわたしにはトキメキに変わる。

どんな形であれ、絡めるのは嬉しいから。

慌ててデスクへ向かうと、眉間にシワを寄せた編集長が、わたしを睨みながら原稿を叩きつけた。

このパフォーマンスも、誰にでもやることで、もはや驚く人はいない。

「なんだ、このキャッチフレーズは?もっと読者を惹きつけるようなフレーズに変えろ」

「はーい」

デートスポットお勧め記事にダメ出しを食らい、仕方なく原稿を引き取ると、さらに編集長はわたしを睨んだ。

「言葉を伸ばすな」

「…はい」

分かってる。

こういうところが嫌われてるって。

怒鳴るところとか、変なところで細かい性格が、みんなには鬱陶しいと思われてるのだ。

そういえば弥生はさっき、わたしにキレイな顔をしてるんだから、マトモな人を見つけろって言ってたけど、そのままソックリ返すよ。

弥生だってスレンダーな美人なんだから、編集長を好きにならないで。

彼のいいところは、わたしだけが知ってればいい。

だから、気付いて好きにはならないで。