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「大きなビル…」

ハーティーの本社は中心地のちょうど真ん中にある、薄いグレーのビルに入っているらしい。

そのビルの玄関には、有名企業の名前が連なっていて、それだけで尻込みしてしまった。

「編集長まだかな…」

約束の時間まで5分とない。

心細さと焦りを感じ始めた時、会社携帯の着信音が鳴りビクッとした。

「もしもし、平瀬?オレ」

「編集長!?」

電話に出ると、いつもの愛想の足りない声が聞こえる。

それにしても、『オレ』って彼氏でもあるまいし、編集長の話し方は時々馴れ馴れしくて、勘違いしてしまいそうになる。

距離が縮まっている様に感じて、実は違うんだけど…。

「悪いな。アポが長引いて遅れそうなんだ。先に絵美のところに行ってくれるか?じゃあな」

「えっ!?ちょっと、編集長!」

用件だけ言ってさっさと切るなんて、何考えてるのよー!