思えば、編集長と二人きりで行動をしたことがない。

もちろん、上司と部下だから、飲み会で一緒になったり、お昼を食べたりはする。

だけど、それは他にも大勢いたり、休憩時間という短い時間に限ったこと。

そもそも、仕事で二人きりなんて初めてなのだ。

それも、車という密室なのだから、今からテンションが上がってしまう。

「きゃー!どうしよう」

自宅に戻っても興奮冷めやらぬまま、ベッドへ寝転がり、枕で顔を覆った。

1DKのアパートで一人暮らしをしているわたしは、良くも悪くも自由気まま。

一人暮らしを始めた頃は、友達が遊びに来てくれたり、当時の彼氏と甘い時間を過ごしたりしたけど、最近はそれもない。

仕事が忙しく、寝るだけの場所と化してまった部屋が、今は都合が良かった。

「編集長って、車の運転上手なのかな」

なんて、年甲斐もなく夢見る乙女の様なことを考えていた時、プライベートのスマホにメールがきた。

最近は、滅多にメールがこないだけに珍しい。

すると、メールの発信元は、アドレスに載せていないものだった。

「誰?これ」