会議室のドアの前で、ノックが出来ずに立ち尽くしている。

話し声も聞こえてこないから、入るタイミングが分からない。

何度かノックをしようと、ギリギリまで手を持っていくも、やっぱり出来なかった。

「やめようかな…」

そんな弱気になり始めた時、勢い良くドアくが開いて、亮平が出てきたのだった。

「平瀬、どうしたんだ？」

驚いているものの、表情は明るい。

「えっと、あの…」

肝心の早川さんの名前を言えずにためらう。

すると、その早川さんが奥から顔を出したのだった。

「平瀬さん、わたしに会いに来たんじゃないですか？」

早川さんも晴れ晴れとした表情で、わたしに笑顔を向けている。

「そうだったのか。じゃあ、オレは戻るから」

亮平はわたしに小さな笑顔を向けると、オフィスへ戻って行った。

早川さんと二人きりになると、さすがに緊張する。

「あ、あのね早川さん」

空気を変えるつもりで声をかけると、それを遮られてしまった。

「編集長のことですよね？大丈夫です。わたし、分かってましたから」