それは、今回のプロジェクトのこと?
「やっぱり、親会社に行く可能性が高いの?」
「ああ。それに、仕事を極めていくのは夢だったから。だけど、香乃子と付き合い始めて迷いが出てきたんだよ。離れたくないから」
そう言って亮平は、抱きしめる腕の力を強めた。
「じゃあ、話しちゃったら離れ離れになるんじゃないの?」
もしわたしが運良く親会社に行けれても、部署は違ってくるはずだ。
今みたいに、一日中一緒にはいられない。
それどころか、残業の多い亮平のことだから、すれ違いが増えるかも。
急に不安になってきたわたしに、亮平はキッパリと言ったのだった。
「きっと大丈夫だよ。それよりも、今回みたいに、香乃子が他の男と会うのを止められないのはイヤだな。堂々と言いたい。香乃子はオレの彼女って」
「うん…。言って。言って欲しい」
背中に手を回し、体をギュッと抱きしめる。
「束縛、すると思うよ?」
亮平はやっぱり気にしていたのか、わたしの反応を伺う様に言った。
「ごめんね、亮平。傷つけちゃった。わたし、そんな風に全然思ってないから。だから独り占めして」
ゆっくり離れると、亮平を見上げる。
そして背伸びを一つ。
わたしから、キスをした。