「おはようございまーす…」

朝食でレストランに降りると、すでに亮平と早川さんが来ていた。

「おはようございます!平瀬さん」

昨日とは違って、早川さんはご機嫌だ。

「平瀬さん、ここのオレンジジュース美味しいですよ。取っておいたんで、どうぞ」

「ありがと」

早川さんの隣に座ると、さっそくオレンジジュースを口にする。

それにしても、亮平の機嫌も分かり易い。

全く視線を合わさないし、声もかけてこないんだから。

不自然過ぎなのよ。

せめて、挨拶くらい返してくれてもいいのに。

黙々とご飯を食べていると突然、亮平のスマホが鳴ったのだった。

「もしもし?」

仕事の電話らしく、スマホ片手に席を立つ。

「編集長も大変ですねぇ」

早川さんは亮平の後ろ姿を見送りながら、感心したようなため息をついた。

「そうだね。これで少しの間、気が抜けられる」

こっちは安堵のため息だ。

あんなに不機嫌にされちゃ、こっちもかなり気を遣うんだけど。

そんなわたしを見て、早川さんは小さく笑っていた。