わたしのお陰?

「どういう意味ですか?」

いまいち理解出来ないまま、キョトンと見ていると、修司さんはスーツの襟を正した。

「沙耶に会ってくる。例え、ホテルのオーナーに恨まれても、もう一度会いたい」

「修司さん…」

さっき清々しく感じたのは、この決心をしたからだ。

「ありがとう、香乃子ちゃん。ここで別れていいかな?」

「も、もちろんです」

返事を聞くか聞かないかの内に、修司さんは走ってホテルの中へ消えていったのだった。

なんてすごい行動力。

しばらく、呆然と修司さんが消えていった方を見ていると、大事なことを思い出したのだった。

「あっ!肝心な話をしてなかった」

ボーッとしてる場合じゃない。

亮平に説明する為に、修司さんの話をしていいか聞きたかったのに。

「もう最悪〜。何しに来たんだろ」

ガックリと力が抜けて、ベンチに座り込む。

何の為に亮平を傷つけてまで、ここへ来たんだか。

夜空を見上げながら、ため息を一つ。

本当は今夜も、ずっと一緒にいたかった。

亮平の誤解は、一体いつになったら解けるだろう。

そんな心配で、夜はまともに眠れなかった。

だけど次の日、見事にその気持ちは吹っ飛んだのだった。