「編集長、自分の分は出しますから」

会計時、先に財布を取り出した編集長が、さっさとお金を出している。

「いいよ。高いもんじゃないし、気にするなって」

「すいません。ありがとうございます」

おごってもらっちゃった…。

それにしても、客観的に見れば編集長ってカッコイイよね。

部下じゃなければ、目を引く人だと思うんだけどな。

お金を払う姿もスマートで…。

「ほら、平瀬行くぞ」

「あ、はい」

声をかけられ我に返る。

油断をすると見とれてしまうから、いけない。

「編集長、本当にごちそうさまでした」

「どういたしまして。午後からは企画会議だし、頑張ろうぜ」

「はい!」

さりげなく合わせてくれる歩幅も、さりげなく車道側を歩いてくれる気遣いも、全てがわたしの心を掴んでいく。

大好き、編集長。

いつか、そのズボンのポケットに入った手を、繋げたらいいなって、ちょっとだけ妄想。