「園田、先教室帰って俺早退って言っといて」

「え、うんわかった!」

幸い生徒指導室から教室は近いので俺の鞄を持つと走って学校を飛び出した。



…まだこの辺に居るはず。

周りを見回すと探していた人の後ろ姿を見つけた。

「…佐倉!」

「大神くん?」

走って佐倉に追い付き、赤くなる頬を隠しながら聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

「送ってやる」

しかしその呟きはちゃんと届いたようだ。

「ありがと」

「なぁ、お前はさ、なんでわざわざ首突っ込んだんだ?」

「美希は、大切な友達だから。

…あの子のためなら悪役にだってなってやる」

「そんなに大切か?」

「美希はね、私の一番最初の友達なの。

…うぅん、最初で最後の友達かな。

今日、美穂姉に話すよ。なんで私が天野くんを殴ったか。美穂姉なら受け止めてくれるし秘密にしてくれるハズだから」

「…そっか」

何かを隠している様な、そんな目で話す佐倉に何も言えなかった。けど一つ疑問はある。

「美穂姉って?」

「寺内美穂。担任よ。私の従姉妹。」

「マジで⁈」

「うん。

…私の家ココなんだ。送ってくれてありがとね」

「おぅ」

「じゃね」

「ぁ…待て!」

家に入ろうとした佐倉を無意識のうちに引き止めてしまった俺。

「ん?」

何か言わなきゃ…

そうだ、さっきからずっと疑問になってた事を聞こう。

「なんで、悪役に自分からなったんだ?

お前は、その…ほら、可愛いわけだし、男女共に人気だし、ほっときゃ先生や友達とかの信頼も落ちなかったじゃん。いくら園田が大事だからってわざわざ悪役にならなくったって大丈夫だったんじゃねぇの?」

「…きっと、私は悪役になる事でしか美希を守れないから。

それに、もし私が消えたとしても美希の中でカッコいい悪役として一生記憶に残るだろうし、ね。」

「カッコいい悪役?」

「うん。

友達を守る為に全てを捨て、闇になった。そして、友達を守る為だけに暴力を振るい、自分の為の暴力は振るわない。そんな悪役。カッコよくない?

それに私は一人でも美希以外にわざと悪役になったって知ってくれてる人がいるから嬉しいの。

一匹大神くん、次学校に行く時から一匹狼の佐倉舞にどうか話しかけてちょうだいね?」

空を仰ぎ見ながら語る佐倉がカッコよくて。バックに桜が散ってそうだ、と素直に思った。

「…当たり前だろ?」

「その返事もらえてよかったわ。

じゃぁね」

「三日後!ちゃんと学校来いよ!」

「高校生活後一年なのに休んでたまるもんですか!本当は三日も自宅に篭るのも嫌なのに!」

そう言って笑った佐倉に安心した俺は手を軽く振って家に帰った。