湿気が襲う。
冷房の効いた塾から、そっとドアを押して、外にでる。俺の後ろを裕がついてくる。
暑い。
夜だってのに、体内時計が狂ったアブラゼミがないている。
揺れる鳴き声に合わせてきれかけの街頭が点滅する。
夏期講習の帰り道。俺と裕は並んで歩く。
静寂。
お互い疲れはてていた。特に話題もないから、マナーにしてあったケータイを開いた。新着Eメール一件の表示。
大津 璃茶架
塾終わった!帰り道会えるかな?今どこらへん?
りさかからのメール。表示は三分前。急いで返信を打つ。
有馬 直紀
今、ファミマの前。裕も一緒だよ。
りさかは、俺の彼女。ずっと前から好きだった俺が今年の春、結構話すようになった所で告白した。
二ヶ月目で、りさかの誕生日にデートもした。お互いキャラじゃないからとりさかに拒絶されたから、手は繋いだ事がない。
だけど俺ははやくあの手を握りたくて仕方がない。強く握りしめてやりたい。やっと叶った恋を思いっきり楽しみたい。
そんなことを考えているうちに彼女からメールが来た。