下り坂を降りて、学校へ。時間で言うと約10分。帰りは15分。早いようで長い道のり。制服も変わっておらず、友人も変わっていなかった。
変わっていたことは、本当に流だけで。私の知る流は、本当に消えたようだ。これなら、タイムスリップの方が良かった。今、私が晒されているのは、きっと別の世界へ行っているだけだ。未来でも過去でもない、新しい世界。
タイムスリップは過去か未来。私の知る流が、いるか居ないか、それだけだ。
本当に現実味がない。私は頭を抱えている。戻ろうとも、居ようとも、思えない世界。
「遥菜」
急に名前を呼ばれて驚く。首に冷たい感
覚が、体を走る。
「冷たっ!」
後ろを向くとケラケラ笑顔の、流とそして、その手にはキンキンに冷えているであろう、缶ジュース。
「これ、やるよ。...だから、元気出せよな!」
ポンと、投げられた缶ジュースを受け取り、
「ちょっ!流!
わ、私は元気だってば!」
と言い訳をかざす。
「バーカ。そんな嘘、他のやつは騙せても、俺は誤魔化せねーよ。何年、一緒にいると思ってんだよ」
流が、私の頭を小突く。ヒリヒリする。
「俺、今日、部活ねーんだわ。
放課後、教室に待ってて」
「...なんで?」
私が不思議そうに聞くと、またぶすーと顔を変化させて
「決まってんだろ?
一緒に帰るの!帰るの!分かったか?」
勢いに負け、
「はいはい。」
と返事をして、流は男子グループへと戻っていった。
渡された缶ジュースのプルダグに手を掛ける。ジュースは炭酸で、ほんのり、桃の味がした。