「…ぐずっ。 …誰?…。」
戸惑いがちに聞かれる。
「あ!ごめん。使ってた?俺、杉本 翔。泣いてたの?」
とりあえず謝り、名前を聞く。
そしてお節介にも、泣いていたのかを聞いた。
すると彼女は、
「は、はぁ、私は桜木美緒です。」
泣いていることには触れてほしくないのか。
「ん。知ってるよ。」
やべっ。知ってるとかゆっちゃったよ。
「えっ??なんでですか?」
そりゃ、聞くよな。
俺の事知らないんだもん。
「美緒はなにかと有名だからね。」
いきなり呼び捨てはやべぇか?
そして、有名だから、と咄嗟に嘘をつく。
まぁ、ある意味有名じゃね?
イスから落ちたんだし。
「そ、そうですか。私、翔のこと知らないの。同じ学年?」
翔って呼んでくれたよ!!!!
「知らないのも当然だよな。
だって俺、2年だもん。」
俺は答える。
「ごめんなさい。じゃあ翔先輩ですね?」
あー。翔って呼んでもらいてぇ。
「いや、翔でいいよ。ところで美緒はなんで泣いてたの?」
大丈夫と返す。
そして再び泣いていた理由を問う。
「実は……」
美緒の話を聞いた。
美緒も片想いしてたんだな。
どうしてこうもうまくいかないんだろう……。
いつのまにか保健室をでて行こうとする美緒を引き止め自分の胸の中に収めていた。
美緒はびっくりしていたが、
ふわりと微笑み、
「ありがとう」
と言ってくれた。