「すみません、邪魔してしまって」
「気にしないで、松浦さんは情報誌を見て来たの?」



と言って、姫野さんはカップを口へを運んだ。仕事中とは違う優しい口調が姫野さんらしくない。



「はい、それと先日、御坊さんと一緒に来たんです」
「そうか、御坊さんと一緒にね」



くすくすと姫野さんが笑い出す。



私は何か、おかしなことを言っただろうか。阿藤さんが姫野さんを連れてきたように、美波が私を連れてきたから?
いやいや、一緒にしてもらったら困る。



話題を変えようと、まず浮かんだのはホテルでのこと。阪井室長と笠子主任と橘さんと、もうひとり知らない男性が談笑していた。



たぶん、まだホテルに居るだろう。
プロジェクトの関係なら、姫野さんも一緒のはず。一緒ではないということは、プライベートだろうか。



だったら、姫野さんには話すべきじゃないかもしれない。



「松浦さん、今日はひとりでここに来たの?」
「はい、ひとりです。少し気になったことがあったから……」



と言いかけて思い出した。
さっき、茜口駅で思いついたこと。早く彼に話したいと思っていたこと。