「こんにちは、こんな所で会うなんて驚いたよ」



声を弾ませる姫野さんの隣りには、どこかで見たことある男性。話したことはないけど、確かに見覚えがある。



ようやく私が思い出した頃に、



「こんにちは、阿藤です。御坊さんと一緒に広報課で仕事してる……って知ってるよね」



と、阿藤さんが名乗っていた。



「はい、こんにちは。企画開発室の松浦です。よろしくお願いします」



慌てた私は緊張感一杯。まるで新入社員のような、ぎこちない挨拶になってしまって気恥ずかしい。ちゃんと笑うことができていたのか、自信だってない。



だけど、姫野さんと阿藤さんが二人でケーキ屋さんに来てるなんて不思議。線の細い阿藤さんはともかく、体格のがっしりした姫野さんにケーキ屋さんは不釣り合いに思える。



尋ねたい気持ちを堪えていると、姫野さんと阿藤さんが顔を見合わせた。



「僕たちがこんなところに居るの、おかしいと思ってる?」



恥ずかしそうに姫野さんが問い掛ける。



思わず『はい』と答えてしまいそうになったのを、制止してくれたのは店員さん。喫茶コーナーが空いたから案内してくれるという。