茜口駅の北側へ出て、すぐ目の前にある商店街。そこから、ひと筋逸れた通り沿いにケーキ屋さんがある。



しっかりと手には沿線情報誌を握り締めて、私は店のドアを開いた。



何人かの店員さんの明るく弾んだ声が、私を温かく迎え入れてくれる。だけど、店員さんの姿はひとりも見えない。



まず目に飛び込だのは、何人ものお客さんの背中。ショーケースの前に立ったお客さんたちが、頭や上体を左右に振ってケーキを覗き込んでいる。



ショーケースの向こう側には、お客さんの注文を受ける店員さんと手際良くケーキを箱詰めしている店員さん。



その合間を縫って喫茶コーナー担当の店員さんが、トレイを片手に屈みこんでショーケースからケーキを取り出している。



喫茶コーナーもお客さんでいっぱいで、時おり賑やかな笑い声が響いてくる



日曜日だから?
それとも、沿線情報誌に掲載された効果だろうか。



美波と訪れた時よりも店内は慌ただしく、活気と熱気に溢れているのは確か。



少々沈みがちな私が、こんなところに居るのは場違いのようにも思えてきた。