嘘をついたのはお互い様。
これで引き分け、プラスマイナスゼロになるからいいんじゃない?



半ば投げやりな気持ちで、茜口駅へと向かってる。駅を出た時とは比べものにならないぐらいのスローペースで。



足も体も気持ちも重くて、なかなか前に進まない。進まなきゃという気持ちも、すっかり薄れてしまってる。



横断歩道を渡っている私を、後から来た人たちが次々と追い越していく。



どうして、茜口なんかに来てしまったんだろう。



来なかったら、彼の嘘に気づかずに済んだのに。
彼の嘘を信じて何にも疑うことなんてなかったし、余計なものを見ることもなかったのに。



胸の中で疼いているのは、騙された怒りよりも後悔。



たとえ嘘をつかれていたとしても、知らないままで居たかった。嘘だと気づかずに、今度また彼に会いたかった。



茜口駅の南口からコンコースへ。
改札口を目指す途中、バッグの中でスマホが震え出すのに気がついた。



きゅっと胸が締めつけられて、一気に込み上げてくるのは不安と僅かな期待。



スマホを握る手に、必要以上に力が入ってしまう。