スーツを着て談笑する四人。
その中でも、一番若い男性から視線が離せない。



顔を確認できていないのは彼だけ。それに背格好とスーツに、なんとなく見覚えがあるような気がしたから。



ずっと後ろ姿しか見せないし、少しの隙も感じられないし、苛立ちは募るばかり。



少しぐらい、横を向いたりしないわけ?



観葉植物の葉の陰から顔を覗かせて、振り向きやしないかと様子を窺ってる。
なかなかエレベーターは来ないし、みんな話に夢中だから、さりげなく素通りしてもバレないかもしれない。



いやいや、早まっちゃダメだ。
あと少しだけ、待ってみよう。



エレベーターの到着を告げるベルの音が合図。大きく息を吸い込んで、さらに目を凝らした。視線の先には彼の後頭部。



ほんのちょっとでいいから、横を向いてみて……、念を注ぐように視線を送り続ける。



エレベーターのドアが開いた。



降りてきた乗客を避けて、四人がドアの両端に分かれる。向こう側に阪井室長と笠子主任ともうひとりの壮年の男性。反対側には、ターゲットの彼。



エレベーターの中を確認する仕草で、顔を傾ける。