疑問を抱えたまま、南口から出て交差点へ。



日曜日の午後だというのに、ここも人の数はさほど多くない。先日、姫野さんと一緒に訪れた時と交通量はほとんど変わらない。



タクシー乗り場に列を成す客待ちのタクシー。運転手たちが車を降りて、けたたましい笑い声を上げている。



交差点で信号を待っている人の数も少ないし、駅前に並んだファストフード店やカフェの店内には空席が目立つ。こんなことを言ったら失礼かもしれないけど、そのうち潰れてしまうんじゃないかと思えるほど。



ぷらりと歩いているうちに、信号が青に変わった。なんとなく流れに乗って、横断歩道を渡り始める。



交差点の向こうに、ホテルが見える。
そうだ、姫野さんと来たときと同じコースを歩いてみよう。ホテルから空き地の傍を通って、家電店などの並んだ辺りまで。



ホテルのエントランスへと続く緩やかな坂を見上げた。



エントランスの大きな一面のガラスが、陽射しを吸い込むように輝いている。眩しさに目を細めたら、エントランスの前に停まっていた二台の高級車が走り出す。



走り去る音とともに、何処かで聞き覚えのある声が耳に飛び込んだ。