『必ず、お前を迎えにくる。
それまで、お前の隣を開けとけよ』

大野くんは、第二ボタンがなくなった学ランを着て、卒業式に出られなかった私の家に来た。

『な、なんのつも___』

私は不意に抱きしめられた。

『ちょ、ちょっと。お、大野くん。
ドア開いてる…』

だけど、私は抵抗もせずにただ抱きしめられていた。
彼の髪の毛は真黒で綺麗で、シャンプーの香りがする。
私よりも何十センチも身長が高いあなたは、私を胸の中に収めて、何分も抱きしめたままだった。
十分程すると、あなたは私を離した。
そして言った。

『開けとけよ。お前の隣』

すると大野くんは、首から下げていたペンダントを私の手に握らせて、走って行ってしまった。
銀色のSの形をした、金具がついていた。
私の名前に合わせてくれたのだろうか。
ぼーっとしているうちに、大野くんの後ろ姿も見えなくなっていた。
まだ少し肌寒い風が吹き、私を現実に引き戻した。
遠くからは、4時の時を知らす鐘が聞こえて来た。