そう宏が叫んだ声に反応した私は、反射的に家の方向へと走り出していた。
宏も走っていたから、もしかしたら追い付かれるかもしれない。
「はあっ、はあ…っ」
家の前に着けば、後ろには誰もいなかった。
よかった…、追い付かれなかったみたい。
私は昔から逃げ足だけは速かったからなぁ…。
「…、ただいまぁ…」
ガチャリと玄関を開ければ、たたたたと誰かが走ってきた。
「咲希!なんで息切れてるんだ?」
「!お兄ちゃん…」
大学三年生のお兄ちゃん、咲來(さく)。
私を可愛がってくれてるらしい…。
所謂シスコン。
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