意味のある会話には思えなかった。

なにか言いたいことがあるのに言えないって感じ。

「あ、あのね。き、今日晩御飯一緒に食べない?あ、空いてたらでいいんだけど…」

初めて言われた言葉だった。晩御飯一緒に食べようと言われたのは…驚きで何も言えなかった。

「む、無理だったらまた今度でいいのだけど…」

「別に大丈夫だけど。」

そう言うと母は嬉しそうに笑った。

初めて見た母の笑顔。とっても優しい笑顔だった。でもそれは私に向けられているものではない気がした。

「じゃ今日の7時にグランドホテルに来て?遅れないでね?着いたら電話ちょうだい。」

そう言うと急いで私の部屋から出て仕事に出かけた。

そこで見えたのはブレスレットだった。