キーンコーン....と、
ありふれた授業終了の鐘が鳴る。

高校一年、4月も下旬。
まだクラスにぎこちない雰囲気が漂っている時期。

おれはさっさと教科書を仕舞い、鞄を持ち上げた。いつもならこんなに急いで帰る必要もないんだ。でも今日は...

「なあ、そこの...あ!鳴尾!」

いきなり呼び止められたけれど、絶対今、名前分かってなかったよな?

「何?」

「今日、三組のメンバーで親睦会やろうって話、お前も参加するって言ってたよな?」

あぁ、そういえばそんな話あったっけか...
え、あれって今日?

「日時、初耳なんだけど...」

「え嘘!おい誰だよ!全員に回ってねーぞ!」

「情報員はケンだろーが」

その場にかたまっていた十数人が笑いに包まれる。

人に自分の名前をどうの思っておいて、俺もこいつの名前を知らなかった。名前を覚えるのは苦手なんだ。

「......ケン...?俺、今日は予定入ってるんだけど...」

名字が分からなかったから、とりあえず今呼ばれていた、『ケン』と呼んでみた。

「いきなり名前呼びか、いいね。
でも、予定があるんなら仕方ねーよな。まぁ、あと一年あるんだし、ゆっくり親睦してこーや」

正直、親睦会には行きたい。この最初のイベントがどれ程重要か。クラスのほとんどのやつが行くらしい。今回で友人を作っておかないと、粗方のグループが決まってしまう。クラスで浮くのは御免だ。

「おう、ごめんな。またなんかある時は誘って。今度は俺にも情報回せよ!」

「ハハハ、おー!」

ダッシュで教室を抜け出した。
クソッ、あいつが朝、あんなこと言わなければ。