あたしはベッドに思い切り寝転がった。
「もう…なんでよ。」
頭に浮かんでくるのは彼の顔ばかりで。勉強に集中できそうにないよ。
しばらく部屋でボーッとしてたら時計は5時45分を回っていた。
急いでカバンに筆箱とノートを入れて家を出た。
塾に着くと塾長が教室まで案内してくれた。
言われた通りについて行き、席に座って待っていると続々生徒が入ってきた。
キョロキョロしてると、あたしの前の席に見覚えのある人が座った。
それは、あたしが今一番会いたかった彼。
「燈貴くん…」
あたしが小さく発したその声に気付いたのだろう。
「おぉ。牧谷だよね?今日からなの?」
たったそれだけの一言なのにドキッとしてきゅんとしてしまう…。
「そ、そうなの!あたし馬鹿だからお母さんに無理矢理行かされちゃってさっ。笑っちゃうよね。」
あたしはこの時初めて燈貴くんと会話をした。
好きな人と会話するってすごく幸せ―…。