拓馬の足が止まったのは、先ほどのシミュレータールーム。

今は誰一人いない。



「さっき、下のゆるそうな教官に媚売っといたから!」

「それもっと、ダメだよ!」



いつの間に覚えたの!?ってほどに手慣れた作業で電源を入れ、機械を動かす。

何百というキーがあるのに、操作はお手の物。



「ねぇ、話きいてる?」

「俺は落第なんてやだよ」

「そりゃあ、私もやだけど……」

「ちさとが行かねぇなら、俺だけでも行くけど?」



ためらう。

拓馬は、本気だ。
拓馬の瞳をそう告げている。