ザッバーンと音とともに深く沈む。

しかし、人間というものは浮くものである。

そもそも、水使いの私が水で死ぬことなどないのだ。



プハっと水面に顔を出す。



「あ~よかった」



たぶん落としたと思われる張本人がのんきに言葉を掛ける。

一応、水中から引っ張りあげてはくれた。



「うっわ~。もう、びしょびしょ」



ポタポタと止まることなく水滴が落ちていく。



「さすがにもう出るか。ちさと、そんなんだし、それにもう夕刻だし」



一応、シミュレーションであれど、感覚やそのとき得た傷などはそのまま引き継がれるのだ。



「タイムアウト!」



拓馬がシミュレータールームとの通信を繋ぐ特殊な腕時計、スキャッチをつけた腕を空に掲げ、叫ぶもなにも起こらなかった。