〜由那side〜

「はあ…」

研修医が出て行って
思わずため息がもれる。

ほんとは

"行かないで。"

そう言いたかった。

"1人にしないで。"

まだ傍に、いて欲しかった。

なかなか素直になるのは
難しい。

「研修医め…」

コンコンっ

あたしが呟いた直後
扉を叩く音がした。

「由那さん、入るわよ?」

聞こえてきたのは林先生の声。

ガラガラ

「調子はどう?」

林先生は白衣の両ポケットに
手を入れて、ゆっくり
ベッドサイドまで近づいてくる。

「おかげさまで。
もう大丈夫です。
ご迷惑おかけしました。」

ベッドから起き上がってそう言うと、

「私じゃないわ。」

微笑みながら林先生は言う

「え?」

「それは早瀬先生に言いなさい。」

「…」

何も言えなくなってしまった。

「…ま、今日はもう寝なさい。
自分が思ってるより体は疲れてるから。
いいわね?」

「はい…」

そう答えると林先生は
ふっ
と笑ってそのまま出て行った。

林先生の言うとおり
体は思っているより疲れていた
みたいで、すぐに睡魔に
襲われた。