「由那さん?入りますよ?」

返事がない。

ガラガラ

ゆっくり扉を開いて中に入る。

ベッドサイドまでゆっくり
歩いていく。

由那さんはまだ寝ている。

近くにあった椅子を寄せてきて
そこに座る。

由那さんの顔を見ると、
少し、淋しそうで

初めて由那さんに会った時、
悪態をつかれたことを思い出した。

まあ、今もあまり変わらないけど。


多分、瞬時に俺に裏があることに
気付いたんだろう。



裏表を使い分ける理由は、そもそもは
女からの誘いや告白にかわすのに
便利だと思ったから。


そして気付いた。

上手く面倒ごとをかわすのに、表の顔が便利だということに。


でも、由那さんの前だとそれが
通用しない。


今日も病室に由那さんがいないことに
焦った。

多分、広場だろうとは思ってたけど。

その後 病室にちゃんと帰れたか心配で
見に来たらあれだから、
正直、驚いた。

発作もそうだけど、
泣いていたことに。



不謹慎だけど、
由那さんの弱い部分が見れた気がして
すげえ嬉しかった。

普段きっと、お母さんにすらも、
強がっているんだろうから。

咄嗟に呼び捨てしたり抱きしめたのは、
思いっきり素だった。












守ってやりたくなった。

俺が、由那さんを。

弱い由那さんを。



きっとそれは、
出会った瞬間からだったーーー。