「おい!バカアカリ、逃げるぞ!」
冷えた手のひらを引く、小さな手。
「ア、アカリ!?おい!!」
しかし固まった身体はやっぱり動かない。
刃物が何かを裂いて唸る。
悲鳴。
続く銃声。
血飛沫。
潰された果物の甘い香り。
それに混じった生臭い、
「お、母さん...」
「アカリ?どうしたんだよ、しっかりしろよ!!」
遠くでリクの震えた声がした。
ドンッ....
また誰かにぶつかった。
ふらり、倒れ込む。
しかし地面に手をつくことはなかった。
ぶつかったその誰かがそのままリクを抱えあげ、力強く私の腕を掴んで駆け出した。