出会いとは本来人と人とが約束してあう意 偶然にあう意や物事とのであいの意に転用
出逢いとは親しい人との対面や貴重なもの
とのであいの意で好まれる。
明鏡国語辞典より…。
「千種千種~」
「却下」
「まだ何も言ってないんだけど」
「お前の言うことなんてたかが知れてる
どうせ合コンだろ」
「さっすが千種!!分かってるなら話が早いわ~今日の七時からな。仕事終わらせろよ」
「は?行くなんて一言も…大和…はあ」
今にもスキップをしだしそうなほど浮かれている槇田大和に向けて遠慮なくため息をはきだした。
大和は、大学からの同期生でたまたま同じ病院に入ったが…それ以来毎日のように合コンに誘ってくる。
あいつは顔も愛想もいいから女子が寄ってくるが特定の女は作らない主義だかなんだか。要は、面倒なやつ。でも、信頼もしてるやつ……絶対言ってなんかやらねぇけど
でも…合コンは行きたくねぇ
アルコールが入る分、しつこく絡まれるし
そんなことを思いながら…わざと若干の仕事を残して交代の時間を迎えた。
「千種!!待ってたろ」
いや、楽しみにしてたのはお前だけだろと心の中で突っ込みをいれる。
言っても聞いてないだろうから
「俺は行かない」
「なんでだよ…俺の奢りだって」
「仕事終わってない」
「どーせ、明日でもいい会合のなんかだろ?」
「だったら?」
「連れてく」
あえて、イエスもノーも答えずに反応を見ると…即答された。
よくよく見ると、確かに白衣を脱いで完全に帰る気である。
「……今日だけな
これからは絶対行かないからな。」
「やっとその気になったか!!行くぞ」
本当に楽しそうな大和に渋々パソコンをシャットダウンした。
「……で?」
「うん?」
「何人来るんだよ?」
「俺ら合わせて6人
しかも、今日は超可愛い子だから!!」
目に見えて嬉しそうな大和をちょっと尊敬する…。
どうやったらそんなに楽しみに出来るんだか。
ひとりで話し始めた大和に遠慮なくため息をはいた。
「あ?」
「♪♪~」
鼻歌を歌っている大和を見て……さっきの言葉に違和感の正体を考える。
「大和。6人って言ったよな?」
「言ったよ~」
「あと一人の男って誰だよ」
そう、4人ならまだしも6人となると確実に1人あまりが出る。
「言ってなかったっけ?伊月呼んだって」
「…伊月?あいつが合コン出るのかよ?」
伊月もまた、大和と同じく大学時代の同期生。が、大和とは正反対で大の女嫌い。
「来るだろ!!酒奢るっつったし~」
「伊月に奢ったら金無くなるぞ…」
なおかつ、ざる。
「店で待ち合わせ言ったからいるかな~」
「絶対来てないぞ伊月は」
「んだよね~千種~電話しろよ」
「何で俺が」
「お前のお願いなら聞くだろ?」
「いや、別に来なくても俺は困んないし」
「まあ…千種が女子に囲まれるだけだしね」
「は?」
「んー」
自分の言ったことを大して気にもせず…というより寧ろほぼ無意識の言葉だったらしい。
俺の不機嫌な理由がわからないらしく首を捻った。
「お前な…」
俺が文句を言おうと口を開いた
が…
その時間。
僅か数秒……。
「着いた着いた!!」
嬉しそうに店内へ入っていく大和に再びため息をはく。
まるで遊園地に着いた子供みたいだ。
店内はお洒落な雰囲気で今流行りのラブソングが流れていた。
「こちらです」
店員に案内されたのはそこそこ広い大部屋
がらり、扉を開いた大和の後ろから中を眺める。そこには如何にも大和の好きそうな女がふたりと合コンには不釣り合いな雰囲気の女がひとり。
「大和くーん 遅いよ~」
すぐに声をかけてきた女の隣に大和は腰を下ろす。…てことは俺は大人しそうな女の隣か…まあ1番楽だな。
とか思い、隣の女を見る。
それまで大和等の方を見ていた彼女ははっとしたように顔を俺の方に向けて緊張気味に微笑んだ。
………これは、
その時のラブソングがやけに耳に残った。
♪君に出会った♪
「ちーとーせ!!」
「楓ちゃん。どうしたの?」
大学の食堂で茉奈夏ちゃんとお昼を食べていたとき、中学から一緒の遠藤楓ちゃんが声をかけてきた。
「んーとね…ちとせさ、彼氏いないよね?」
「うん。そうだよ」
「合コン行かない?」
「ふぇ?合コン!?」
「もしかしてあのイケメンなお医者さんたちの?」
イケメン?お医者さん?
「そーだよ!!もうひとり連れてきたらって大和に言われたからさ~」
「…大和くんに?」
大和くんは楓ちゃんの彼氏みたいな人らしい…一度しか会ったことはないけど、色々話してくれるし面白い人だな~と思った。
「なんか今回は今までで1番イケメンな人を連れてきてくれるんだって!!」
「えっと…だったら茉奈夏ちゃんが…」
そう言った私の言葉を遮って茉奈夏ちゃんが
「あたしも行くよ?だから一緒行こうよ」
合コンなんか行ったことないけど…ふたりがいるなら大丈夫かな?
「うん。分かった」
「よかった~!!じゃあ講義終わったらLINE飛ばすね!!」
そう言って楓ちゃんは食堂を出ていった。
「うーん…大和よりもイケメンか~」
「うん?」
「楽しみだね!!ちとせ!!」
「そうだね。でも合コンって何するの?」
「えー…いや、うん。ちとせだからね」
ひとりで何か呟き始めた茉奈夏ちゃん。
「茉奈夏ちゃん?」
「まあ、行けば分かるよ。楽しみにしてな」
「ふふ。分かった」
そして、迎えた初めての合コン。