それに掴まれた所は腕だった筈なのに
なぜか私の手を包むように手を重ねていた
「…なに?」
「はぁ…」
桐島は私をまっすぐ見据えてため息をついた
そしてその言葉は
私の思考を停止させるには十分だった
「俺は清羚の人間だ
このピアスは、ラリマーの石だ」
うそ…この人が?
この人が私の探していた人なの?
確かに私に見えるように耳にかけてくれた
髪から見える群青色のピアス。
デザインからみてもこれは本物だ
こんな早く見つかるなんて…
「お前が刹影なら、俺を殺してもかまわない」
そう言う彼は嘘を言っているようには見えない
…それとも私を騙してるのか
…けど、それでも私はこの人に賭けてみたい
そんな気持ちが溢れていた
普段ならそう簡単に人を信用しないのに
だから…だからこそ、私は……
「わたしも…清羚
石は…インカローズ」
震える手でポケットからピアスをとりだした
その瞬間
ふわりと香った甘い香り
…あぁ抱きしめられてるんだ
こんなの初めて
「あったかい………」
思わずそう呟くと桐島はフッと笑って
「やっと見つけた」
そう言ってより強く私を抱きしめた
ーーけれどそこに愛情は無い
ただ"見つけなければいけない”
その使命感から解き放たれただけ
ねぇ、目標を失った私は
これからどう生きればいいの?
だんだん話がこじれてきたね。
じゃあここで少し昔話をしよう
昔、今から100年ほど前
この国には2つのトップがいました
それが刹影ーsetsueiーと清羚ーseireiーでした
刹影は反逆非道の族
清羚は優しく、憧れられる族でした
真逆の族が共に地を治める…それは
とても難関なことでした
度々衝突を起こしており
その仲は嫌悪でした
その時代が続き40年、事件が起こりました
ある日、清羚のメンバーが巡観をしていると
男が倒れていました。
男の顔や身体はアザだらけで
あきらかに誰かに殴られた跡でした
清羚のメンバーは男に
"どうしたのか"
と、聞きました。すると男は
"刹影を抜け出してきた助けてくれ"
と言いました。
困った清羚のメンバーはとりあえず
拠点にその男を連れて帰りました
そう、それが事件の発端でした
刹影の一番の罪は"裏切り"
それも相手が敵対する清羚。
刹影は怒り清羚に喧嘩を申込みました
しかし清羚はそれを却下しました
怒りをあらわにした刹影は清羚に攻め込み
互いに消滅しました。
…それがみんなに伝わっている昔話
けど、本当は少し違う
この話にはピアスの話が無い
それを知るのは清羚と刹影、
その生き残りだけ
みんなは全滅したと思ってるみたいだけど