目を閉じて手を合わせて心の中で呟く


紅羽。


久しぶり


元気だった?


……ちゃんと仲直りできた?


まぁ紅羽の事だからきっと上手くいってるんだと思うから心配はしてないけど。


幸せだったら嬉しいよ


私は……って紅羽、知ってるか。


ずっと見ててくれてるんだもんね??


なんちゃって。


…今振り返れば、私は生まれてからあの戦いが終わるまで走り抜けてた


すごく早かった。一瞬だった。


でもこれからは今まで以上に早いと思う


だから、


私は今の幸せな一瞬一瞬を大切に過ごすよ


紅羽達の分まで、ちゃんと生きるよ



上で待っててね。


時が経ったら必ず会いに行くから。


それまで…見守ってて



それじゃあ、またね。




最後に、届きますように


そう願って閉じていた目をゆっくり開いた


「…………っ!!!」



すると、信じられない事が起きていた


ふと目を向けたの石碑の上には



……2つのピアス



ほんの少しだけ濁っているのに


白く煌めいていて


太陽と反射して7つの色を作り出していた



息を呑む私


あの戦いが脳裏をよぎったその時




____バサッ



翔聖の持っていたノートが音を立てて落ちた


そして、風でパラパラとページがめくれ


……ピタッ


止まったページは、一番最後のページ。


そこには



『インカローズ__心の傷を癒す

忘れていた情熱を呼び覚まし

恋愛と薔薇色の幸福をもたらす


ラリマー__無条件の愛

閉ざされた心を解きほぐし博愛を深める


MOON STON__』


言葉を失った。


この何も書いていなかったはずなのに…。


けれどこの言葉は私達によく似ていて


思わず口を手で覆った


驚いて信じられなくて動揺して。


でも、1番は


"何もかもが終わった"


そういう安堵感だった。


「……全部終わったんだな」


翔聖の呟きが聞こえたと思えば


__ギュッ


頭を引き寄せられて、翔聖の肩に頭をあずけるような形になる


「証明しよう。俺達の___……」



そして2つの影は重なった。





『ありがとう』



その時、ふとそんな声が聞こえた気がして


1筋の涙が頬を伝わった。










____*



「紅愛ーっ!翔ーっ!!」


日が沈みかけた繁華街。


私達は人目を気にせず大声を出す集団に呆れ顔を隠せないでいた


「ただでさえ目立つのに……あのバカたち」


叫んだのは楓。


だけど、存在感がありすぎる彼らがわちゃわちゃしていれば誰だって目を向ける。


「あれ、輝の楓さん……!?」


「かわいいーっ!」


……ほら、騒ぎを聞きつけてどんどん人が集まってくる


それに蒼桜だっている。


顔はあまり出してないけど…オーラがダダ漏れ。


うん。ダメだこれ


そんなこんな考えてる内にその集団と合流した


「随分かかったね」


「あー、ごめん。予想外な事が多くて。」


「そうなの?2人とも帰って休む?」


「ううん、大丈夫だよ。ね?翔聖」


「……あぁ」


それでも透真の癒しは健在。


思わず頬が緩んでしまう


……まぁそれは置いといて。今日は蒼桜と輝の幹部の親睦会


と、いう名目上の食事会


ただの遊びなんだけどね。


「あーっ、紅愛が透真みて笑ってる!浮気だ!」


「お!?紅愛面食いだったのか……。」


「アンタら……」


うざい、とにかくうざい。


この楓と泉のコンビ


すっごい腹立つ


「「ひぃー!にげろー!」」


キッと睨むとわざとらしい悲鳴をあげて走り回る2人


あぁもう、ほんとにバカ


「……もう行こう」


「そうだね、じゃあ行こうか」


疲れてそう言えば透真が答えてくれて


やっとうるさい集団は動き出した。


けど……。


「翔聖、何どさくさに紛れて手繋いでるの」


「……。」


繋がれた右手が、痛いです。


泉と楓がちゃかしてきた辺りからなんだけど。


理由は何となく分かってる


さて、どうしようかな。


翔聖を見上げるけど本人はプイッとそっぽを向いていてどうやら私と目を合わす気は無いらしい


まあ、私はそんな所も好きなんだけど……。


なんて。


早く行かないとはぐれちゃう



「ね、翔聖」


こっちを見ないのは知ってるよ。


翔聖って意外に頑固で子供っぽいもんね


だから



__チュッ


首に手を回し、思いっきり背伸びして


唇を重ねた


そうしたらきっと…


「こんな所で煽るな」


驚いた様にも見えたけど、この人はきっとこれを待ってた


「……んっ」


けど人通りは多い。


それは充分わかってるから


軽くキスを落とした後


「……行くぞ」


今度は心地いい手の温もり。


……あぁなんだか思い出す





戦いが終わって、


皆が迎えに来てくれたあの時。


蒼桜と輝の皆の広い背中を見ながら


私達は手を繋いで歩き出す





重なって見えたこの光景を


私はいつまでも忘れない





『証明しよう。俺達の絆を…愛を。』

















「パパー!ママー!早くーっ!」


「あ……!冬花―huyuka―!!」


「花音ーkanonー、あんまり走ると転ぶぞ?」


「転ばないでねー?」


「もーっ冬花まで!いつまでも子供扱いしないでよ?










冬詩!」






その後ろを幸せそうな3人の家族が通っていた事は誰も知らない。


満面の笑みを浮かべる小さな女の子と


頬を膨らませる可愛らしい女性を


優しい目で見つめる、この男の耳には


太陽に当たり7色を作り出す


白色のピアスが光っていた。















『MOON STONE__心の平和


不安や心配、心の傷を癒す』



それは永遠の愛の証




END