___電車に揺られること30分



「ここ…?」


「あぁ。」



着いたのは、想像したよりも少しだけ都会な街並みが広がる場所。



「あと30分位歩く。タクシーで行くか?」


「ううん…歩いて行こう」


バイクや車で行けばきっともっと楽に着いたんだろうけど


自分の足で行きたかった。


まぁ、さすがに電車で30分の所を歩くなんて無理だったんだけど…。


「疲れてもおぶって何て言うなよ。


しばらく歩けばほとんど車は通らなくなる」


「なっ…!私そんなヤワじゃないから!」


「へぇー。」


もう、むかつく!!


けれど、知らない場所を歩きながらゆっくり話すっていうの憧れてた。


そして…きっと肩の力が抜けたなら、綺麗な心のままで会えると思ったから。


私達は他愛のない話をしながらただひたすら歩いていた。






そして。


「ほとんど舗装されてないな…。足元気をつけろ」


「えぇー転ばない保証はない」


「……バァカ。しっかりつかまっとけ」


目の前に現れた大きな山の前に立ち尽くす私達。


少し森の中に入ってるから辺りは薄暗い


午後とはいえ、かなり薄暗く見るからに足元は悪い


この中で、見つかるのかな…。


私は、翔聖の手元にある小さなノートを見つめた


「……行くか」


私を気遣いながら歩き出す翔聖はちょっと心配そうで。


もちろん私を気にかけてだと思うけど


たぶん翔聖も不安なのかな、なんて思う


「うん。行こう」


でも、このノートの持ち主は1人で来たんだもんね……。


私は翔聖の服の袖をそっと掴んで、笑顔を向けた






__サクッサクッ…


それから15分程。


生い茂っている木々は本当に光を通さなくて不気味な程暗い


そんな中をノートを見ながら歩いてたわけなんだけど…。


「このへんのはず、なんだよね?」


「あぁ。」


その場所が見つからない


私とは違って翔聖は方向には強いから道を間違えたって事はほぼ無いと思うんだけど。


「"最後の場所は、崖の下。


崩れた所までは25分程かかるが崖の上に出てしまう


見下ろすだけでは何もわからないため


仕方なく10分前に来た所に戻った。


その時、偶然見つけた。


この暗い森の光の通り道


それは4人が作った道。"」


翔聖はノートの内容を読むと、ため息をついた。


光の通り道……4人が作った道……。


降りてきた時に見つけたんだよね


だったら降りてきた時と同じ視点から見ればわかるはず


……が。


抜け道という道は全く見当たらない


「時間が経ちすぎたのかな」


もう数10年前の事。


そもそもこのノートだって、突然輝のポストに入ってた


ゆいさんの研究ノート


前に紅羽が言ってたとても優秀な女性の研究者


嘘だとは言わないけど……。石の効果だったかもしれないし。


"もう帰ろう"


あきらめかけた


その時



「…っ紅愛、逆だ」


翔聖が見つめていたノートから目を離し私に言った


「え?」


逆、って…


「どういうこと?」


「見る方向が逆だ」


え?


翔聖は私の腕を引いて坂を数歩降りた


「逆ってどういう…」


そこまで言ってハッとした


"その時、偶然見つけた。


この暗い森の光の通り道"


「偶然ってまさか…っ」


「あぁ。帰り道に普通なら見つけられない所を偶然見つけたって意味だ」